トランプ政権で日本の不動産市場はどう変わる?
- 山口ねろ

- 3月5日
- 読了時間: 6分
更新日:6月28日

2025年1月、ドナルド・トランプが再びアメリカ大統領に就任し、
その経済政策が世界中で議論を呼んでいます。
トランプの「アメリカ第一主義」は、国内産業の復活と輸出競争力の強化を最優先に掲げており、そのためにドル安・円高を意図的に誘導する可能性が指摘されています。
第一次政権時(2017~2021年)にも、トランプは「強いドルがアメリカの製造業を殺す」と繰り返し発言し、為替介入を匂わせることがありました。
第二次政権でこの方針が現実化すれば、日本の不動産市場にも大きな影響が及ぶでしょう。
今回の記事では、トランプ政権が円高ドル安を仕掛けるシナリオを前提に、日本の不動産市場への波及効果を経済的な視点から探ります。
トランプのドル安志向:円高が進むケース
トランプがドル安を志向する背景は、アメリカの製造業を再活性化し、輸出を増やすためです。具体的には以下のような政策が考えられます:
為替への口先介入:トランプが「ドルは高すぎる」と発言し、市場心理をドル安に誘導する。
関税引き上げとセットの戦略:中国や日本への高関税で輸入を抑えつつ、ドル安でアメリカ製品の輸出を後押しする。
金融緩和圧力:米連邦準備制度(FRB)に利下げを求めるか、財政政策でドル供給を増やす。
第一次政権では、2017年のドル安トレンドが一時的にアメリカの輸出を支えた時期があり、トランプはその効果を高く評価していました。2025年2月現在、1ドル=150円前後で推移する為替レートが、トランプの政策で130円や120円へと円高に振れる可能性もゼロではありません。円高ドル安が進めば、日本の経済環境が大きく変わり、不動産市場にもその影響が波及します。
円高が不動産価格に与える影響
円高ドル安が進むと、日本の不動産市場にはいくつかの変化が予想されます。
まず、海外投資家にとって日本の不動産が割高になるため、外国人による買い需要が減少する可能性があります。
たとえば、1億円の物件がドル建てで66万ドル(1ドル=150円)だったものが、
1ドル=120円になれば83万ドルに跳ね上がります。
これにより、東京や大阪の高級マンション、オフィスビルへの海外資本流入が減少し、
価格の上昇圧力が弱まるかもしれません。
一方で、円高は輸入コストを抑えるため、建設資材の価格が下がり、
新築物件の供給が増える可能性があります。特に、木材や鉄鋼など海外依存度の高い
資材が安くなれば、デベロッパーが開発を加速させ、住宅価格が安定する、
あるいは下落するシナリオも考えられます。
ただし、トランプの高関税政策が資材輸入にブレーキをかける場合、このメリットが相殺
されるリスクもあります。
金利低下と住宅ローンの追い風
トランプがドル安を仕掛ける場合、アメリカの金利が低下する可能性があります。
ドル安政策がインフレを抑え、FRBが利上げを控えれば、日本の長期金利にも下押し圧力がかかるでしょう。日銀はすでに2024年からゼロ金利政策を緩和しつつありますが、
円高が進むことでインフレが抑制されれば、低金利環境が続く可能性が高まります。
この金利低下は、住宅ローン市場にとって追い風です。たとえば、現在2%台の変動金利が1.5%や1%に下がれば、3000万円のローンで月々の返済額が数千円~1万円程度減り、住宅購入のハードルが下がります。特に、都市郊外や地方でマイホームを検討する層にとって、買い時が訪れるかもしれません。一方で、投資家にとっては、低金利でも円高による価格下落リスクが意識され、不動産投資の妙味が薄れる可能性があります。
輸出産業の回復と地方不動産の底上げ
トランプの円高ドル安政策が日本の輸出産業にどう影響するかも重要です。円高は輸出企業にとって不利に働く一方、トランプの高関税が日本製品のアメリカ市場での競争力を削ぐため、影響は複雑です。しかし、円高が適度な水準(たとえば130円程度)にとどまれば、自動車や電子機器の輸出企業がコスト削減で持ち直し、雇用や賃金が安定する可能性があります。
この動きは、特に地方の不動産市場にプラスに働くでしょう。第一次政権下では、円高局面で一部の輸出企業が国内生産を強化し、地方経済が底堅く推移した例があります。2025年も同様に、製造業の安定が住宅需要を支え、地方都市の中古住宅や賃貸市場が活性化するかもしれません。ただし、関税による打撃が大きければ、逆に失業や人口流出が加速し、不動産価格が下落するリスクも残ります。
都市部の価格調整と投資機会の変化
都市部の不動産市場では、円高ドル安が価格調整を促す可能性があります。海外投資家が手を引き、国内投資家の期待も冷え込む中、東京23区や大阪中心部の高値圏にあるマンションやオフィスビルの価格が下がるかもしれません。2020年代初頭から続く不動産上昇トレンドが一服し、買い手市場に転じる可能性も考えられます。
投資家にとっては、価格下落がバーゲンセールのチャンスになる一方、賃料収入や売却益が減るリスクも伴います。円高でインフレ期待が後退すれば、「現物資産」としての不動産の魅力が薄れ、株式や債券に資金がシフトする動きも出てくるでしょう。不動産市場の二極化が緩和され、一般消費者にとっては手頃な物件が増える可能性があります。
エネルギー価格と生活コストの安定
トランプがドル安を進める場合、エネルギー価格にも影響が及びます。ドル安は原油や天然ガスのドル建て価格を押し上げますが、円高がその影響を緩和するため、日本のエネルギーコストは比較的安定するかもしれません。電気代や物流コストが抑えられれば、住宅の維持費が下がり、戸建てや郊外物件の需要が底上げされる可能性があります。一方で、トランプの保護主義が国際サプライチェーンを混乱させれば、コスト安定の恩恵が限定的になるリスクもあります。
日本政府の対応と市場の行方
トランプの円高ドル安政策に対し、日本政府と日銀の対応が鍵を握ります。過度な円高を防ぐために為替介入を行うか、低金利を維持して住宅市場を下支えするか、その判断が不動産市場に大きな影響を与えます。また、輸出産業支援や住宅購入支援策が打ち出されれば、トランプ政権の影響を和らげる可能性もあります。ただし、アメリカからの貿易是正圧力が強まれば、財政余地が狭まり、国内対策が後手に回る恐れもあります。
まとめ:円高ドル安の波をどう乗りこなすか
トランプ政権が円高ドル安を意図的に仕掛けるなら、日本の不動産市場は調整局面を迎えるでしょう。都市部の価格下落と地方の安定が並行し、低金利が住宅購入を後押しする一方、投資妙味は薄れるかもしれません。エネルギー価格や政府対応も絡む中、不確実性が高い状況で、市場を見極める冷静さが求められます。
個人的には、円高が進む初期に価格調整が進む物件を狙いつつ、金利動向を注視するのが賢い戦略だと思います。トランプの政策が具体化するにつれ、その影響も明らかになるので、情報収集を怠らず柔軟に対応していきましょう。




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